3. 細菌感染と免疫応答
https://gyazo.com/5cf480f304be95df6b05504855ff3fd5
1. 自然免疫と獲得免疫
免疫学の第一の疑問「生体はどのように自己と非自己を区別して免疫反応を励起するか」 しかし自分の臓器に対しては拒絶反応あh起きない
すなわち免疫機序の第一歩として、生物は自己と非自己を区別して認識する機構を持っていて、細菌や他人の臓器等の非自己に対してだけ攻撃、排除するメカニズムが働く
一方、自然免疫においても近年、非自己認識の分子機序が明らかにされてきた さらに獲得免疫が微生物に反応するまでの間、自然免疫が働くという、いわばつなぎの作用と同時に、獲得免疫の制御機能を持っていることが明らかになった すなわち、微生物が侵入すると最初に自然免疫が働き、獲得免疫の活性化とその方向性を制御する
2. 自然免疫のメカニズム
自己と非自己の認識には自然免疫は関与していないと思われていた
一方、獲得免疫は抗原受容体遺伝子の再構成を起こすための極めて多くの多様性を持つことが可能
自然免疫の受容体は数こそ限られているが、極めて多くの微生物を認識できる
微生物に特有で、また微生物の種類によらず、共有されている分子
かつてより、微生物が非常に強い免疫反応を引き起こすことが知られていた これを応用して、免疫励起性の弱い抗原と微生物成分を混ぜることにより弱い抗原の免疫励起性を高めることが知られていた Toll分子はハエの生体防御分子で、このTollと遺伝子的に相同の遺伝子が高等動物にも遺伝子群(ファミリー)として存在していることが明らかになり、TLRと名付けられた ヒトでは10種類のTLRが同定されている
https://gyazo.com/200d4af3c5df48c7f0daf2b81947a37b
table: 表3−1 TLRファミリーとPAMPs
https://gyazo.com/ae577ca1b514878d697bd93043820556
未熟DCが成熟DCになる
https://gyazo.com/87af5a5a1f4fef6f98df4045ba1fd35a
さらに細胞内にもCARDファミリーと呼ばれるPRRがあることが明らかになり、その後シグナル伝達はTLRと類似しており、細胞表面、細胞内両方から細胞の活性化シグナルが入ることになる TLRを介するDC(細胞成分がTLRに結合することによりDCが活性化され、その後に起きる反応)をまとめてみる
いずれも自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割を担っている
これらの免疫応答をすべて覚える必要はないが、次々と起こる反応のコントロールタワーとしての機能を理解せよ
3. 補体
近年、自然免疫における補助系の働きが明らかになりつつあり、名前と機能が一致しない面もある
補体は活性化経路が3つ知られている
https://gyazo.com/17c87f5ed46a30751861360c8c069509
認識分子がなく活性化物質で活性化される
いずれの経路で活性化されても、活性化された補体第3成分(C3b)が、侵入した細菌上に結合する https://gyazo.com/f2c51def8ab1cb367c9cfee0d61abd9b
4. 細菌感染の特徴
毒素をはじめ様々な物質を作り、宿主の組織や細胞を破壊したり、免疫能を抑制したりする スーパー抗原は抗原提示細胞の組織適合抗原クラスII分子と、TLR細胞の抗原受容体との両方に抗原の関与なしに結合する性質がある https://gyazo.com/134bc43883ea556089ca53108137f8d5
そのため、スーパー抗原は抗原提示細胞とT細胞とを、抗原とは関係なく結合させることによりT細胞を活性化して、不適切に大量のサイトカインを分泌させたりし、免疫能を破壊する 細菌は毒素以外にも多くの機序で宿主の免疫機序を破壊・抑制しようとする
5. 細菌感染と自然免疫
人体は皮膚や粘膜で覆われており、外界から隔てられ、細菌等の外的の侵入を防いでいる 皮膚は角化層に覆われ、物理的障壁となって細菌の感染を防御している したがって、皮膚への感染は一般に外傷等の防御機構の破綻なしには起きない
一方、粘膜は水分に富み、細菌の生育には好環境であり、実際、消化管等に常在細菌叢を形成している 常在細菌叢は外来性の細菌の定着を防いだり、あるいは定着しても増殖を抑制する 粘膜の生体防御作用は、部位により多少異なる
また、細菌に対する自然免疫として、貪食細胞による細菌の貪食も重要 パターン認識分子による細菌の認識等を介して、皮膚や粘膜、血管周囲に多数存在するマスト細胞(血液の好塩基球が組織に定着したものとされる)は細菌を貪食し、細胞内に蓄えられていたサイトカイン(TNFや化学遊走因子IL-8産生を起こし、好中球を炎症部位に引き寄せる) 6. 細菌感染と獲得免疫
特に毒素を産生する細菌に対する防御機構として有効に働く
中和抗体により細菌から産生された毒素は標的細胞の表面受容体との結合ができず、毒素としての機能を失う
破傷風、ジフテリアに対するワクチンは毒素に対する抗体産生を誘導するワクチンであり、抗体は毒素には反応するが、菌体そのものには反応しない それにもかかわらず、感染防御に有効に働くことが、毒素に対する中和抗体の有効性・重要性を明らかにしている
ただ、グラム陽性細菌でも抗体が結合することにより貪食細胞が貪食しやすくなり(オプソニン効果という)、貪食細胞が補体レセプターを用いて細菌を貪食する そもそも細菌の菌体成分に対して特異性が高く結合能も高い抗体は作られにくい
細菌の菌体表面は多糖体で覆われており、多糖体はタンパク質抗原に比べ免疫原性(免疫を引き起こす力)が弱いため、強い免疫反応が起きず、抗体産生も起きにくい 言い換えれば、細菌は宿主の免疫能を逃れるために多糖体で自ら菌体を包んでいると考えられる
また、多糖体抗原の特徴として、T細胞非依存性であり、結合力の強い抗体ができにくく、記憶B細胞も作られない そのため、細菌感染はウイルス感染と違い、一度に2度3度と罹患する
7. 結核菌と免疫反応
https://gyazo.com/65c854a35624bd76f1f91bcf5c6ac017
そこには宿主の産生する抗体は到達できないため、抗菌には液性免疫(抗体による免疫)は無効 T細胞は結核菌を宿す細胞を、結核菌由来抗原とそれを提示する組織適合抗原(MHC)の複合体を認識することにより見つけ出す 結核菌をはじめとする細胞内寄生病原菌に対する特有な反応として、肉芽腫形成がある 肉芽腫は、好中球やマクロファージが病原菌を完全に排除できないためにできる 肉芽腫は種々の細胞から形成され、病原菌を隔離することにより病原菌を抑制している 8. ヘリコバクター・ピロリ感染と免疫反応
ヘリコバクター・ピロリに対して宿主は強い免疫反応を起こすが、ヘリコバクター・ピロリを排除できない
ヘリコバクター・ピロリに対する免疫反応は主にTh1型であり、細菌感染に有効なTh2型でないことが理由 ヘリコバクター・ピロリ感染ではIL-12が産生されることにより、Th1型細胞分化を起こす